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【司法書士が解説!】相続人が認知症の場合の注意点と対策とは?

認知症の方が相続人にいる場合、様々な手続きにおいて支障が生じます。

実際に何ができないのか、どのような対策を行ったらよいか以下で解説します。

認知症になってしまったら

認知症と診断された場合、民法上では「意思無能力者」とされ、該当する個人が行った法律行為は無効とされます。

具体的には、認知症と診断された後に行われた生前贈与や遺言書の作成、不動産の売却などの財産処分行為は、法的に存在しなかったこととみなされます。

同様に、預金口座の引き出しや解約、振込、生命保険の契約なども、無効な法的行為となります。
また、相続分を増やす目的で行われる養子縁組においても、認知症の場合は無効となるのです。

要するに、親が認知症と診断された後に相続対策を行おうとしても、容易には進めることができなくなります。

相続対策は親が認知症と診断される前に早めに行うことが重要です。

認知症の方が相続人にいたらどうしたらいい?

認知症の相続人がいる場合、遺産分割協議ができなくなります。

相続が発生すると、故人の財産は一時的に凍結されます。
通常、銀行預金の引き出しや不動産の処分は制限されます。

遺産分割協議では、「誰が相続するか」という点を合意することで凍結が解除されます。
しかし、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要となります。

もし相続人の中に認知症などで判断能力が低下している方がいる場合、その方は遺産分割協議に参加して意思表示することができません。
そのため、遺産分割協議が行われず、故人である父親の口座からの引き出しや、名義の不動産の賃貸や売却ができなくなってしまいます。

認知症の相続人がいるからといって、他の相続人が遺産分割協議書などに代筆する行為は無効です。このような行為は私文書偽造の罪に問われる可能性がありますので、絶対に避けるべきです。

同じ理由で、認知症の相続人は相続放棄もできなくなります。
他の相続人が代わりに相続放棄の手続きをしようとしても、家庭裁判所で受理されません。

認知症になると多くの制約をうけることになり、相続手続きを円滑にすすめることができなくなるので事前に対策をしておくことをお勧めします。いつでも気軽に!LINEで相続の無料相談!

認知症の方がいる場合の手続きの進め方

相続手続きを行うためには、相続人全員が遺産分割に同意していることが前提となります。
つまり、相続人としての意思表示が出来ない方がいる場合、手続きを進めることが出来ません

こうした場合には、そうした意思能力の無い相続人に代わって遺産分割協議に参加する代理人が必要になり、その代理人を後見人といいます。

このように、認知症の方が相続人にいる場合の相続手続を進めるにあたっては、まず家庭裁判所に成年後見人の選任申立てを行い、後見人が無事に選任されてから後見人を含めた相続人全員で遺産分割協議を行う流れとなります。

成年後見とは

成年後見とは、法律上の制度の一つで、心身の障がい、病気、高齢などの理由で、自己の意思決定能力が制限された場合に、その人の権利や利益を代理する人を決めることができる制度です。

成年後見の対象者は、未成年の場合は「保護司制度」がありますが、成年の場合は「成年後見制度」があります。

成年後見制度によって、被後見人の生活や財産、医療などに関する重要な決定を、法定代理人である後見人が代行することができます。

後見人は、法定代理人として被後見人の権利や利益を代表し、その責任を負います。被後見人が自己の意思決定能力を回復した場合や、後見人が任意に辞任する場合には、後見の解除が行われます。

成年後見人を付ける

後見人の選任は、家庭裁判所で行われますので、家庭裁判所に対して後見人選任の申立てを行う必要がありますが、後見人が選任されるには、認知症の方の鑑定等が必要な場合もあり、選任されるまで、一般的には2~3ヶ月は時間がかかってしまいます。

相続手続きがスムーズに進めるためには、早めに専門家にご相談いただく必要があります。

成年後見制度における支援の種類は、本人の判断能力の程度に応じて、「補助」「保佐」「後見」の種類に分かれます。

その中でも「後見」が最も多く、認知症の場合にも、通常は後見が開始し、後見人が付くケースがほとんどです。

このうえで、必要書類に署名捺印して相続手続きを進めて、財産の名義変更などができるようになります。

※この場合の後見人には、成年後見人、保佐人、補助人など、認知症の方の程度によっても、後見人の種類が変わることがあります。

認知症になる前に行っておくべきこと

認知症と診断されると、法的には「意思無能力者」とみなされ、意思能力のない人が行った法的行為は無効とされます。
したがって、遺言書などの作成も無効となってしまいます。

認知症後の相続対策は難しい

認知症と診断されると、「意思無能力者」となり、その後に行った生前贈与や遺言書の作成、不動産の売却などの財産処分行為はすべて無効となります。

さらに、預金口座の引き出しや解約、振込、生命保険の契約も無効です。
つまり。、親が認知症になってから相続対策を行うことは困難です。

親が認知症と診断されても相続対策が不可能というわけではありませんが、
なるべく早めに対策を取っておく必要があります。

具体的な対策方法

親が認知症になる前の対策方法として、以下をご紹介します。

✓ 遺言書の作成
✓ 後見制度の利用
✓ 家族信託の利用

遺言書の作成

相続が発生した場合、遺言書に財産分与の指示があれば、遺産分割協議はスムーズに進むことでしょう。

遺言書は法的な文書であり、意思無能力者となった場合には無効とされてしまうため、早めの作成が望ましいです。

また、遺言書は適切な形式でなければ無効になる可能性があるため、専門家のチェックを受けながら作成することをおすすめします。

遺言書には大きく分けて3つの種類があります。
「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」が該当します。

自筆証書遺言

筆証書遺言は、遺言者自身が遺言書の本文を手書きで作成するものです。
書き方には明確なルールがあり、これらのルールに従わない場合は無効となる可能性があるため、注意が必要です。
自筆証書遺言が有効とみなされるためには、いくつかの作成における条件を満たす必要があります。

自筆証書遺言には財産目録が含まれる場合、自筆でなくパソコンで作成した文書でも有効です。
捺印には認印や拇印を使用できますが、遺言の効力が争われる可能性があるため、実印を使用することが望ましいです。
自筆証書遺言は、法務局で保管してもらう自筆証書遺言保管制度を利用することもできます。
自筆証書遺言保管制度を利用する場合、裁判所での検認手続きは必要ありません。
検認手続きは、相続人に遺言の存在と内容を通知し、遺言書の形状や修正の状態、日付や署名などを確認して遺言書の偽造を防ぐ手続きです。

遺言の執行、つまり遺言の指示通りの財産分与などを行う際には、検認済証明書が遺言書に添付されている必要があります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が相続内容を決めた上で、最寄りの公証役場を訪れて公証人に文書作成を依頼するものです。
公正証書遺言を作成するには、遺言者以外の2人の証人が必要です。

公証役場を訪れる際は、事前の予約と、以下の書類を持参する必要があります。

✓ 本人確認書類
✓ 印鑑証明書と実印
✓ 戸籍謄本など相続人との関係を証明する公的書類
✓ 遺贈する場合、遺贈する法人、個人の住民票など
✓ 預金通帳など、遺言する者の資産情報の資料
✓ (不動産を相続させる場合)登記簿謄本、固定資産税評価証明書など
✓ 証人の本人確認書類と印鑑(2名分)

秘密証書遺言

秘密証書遺言と自筆証明遺言の違いは、パソコンなどを用いて書類を作成することができる点です。

どの遺言書を作成するかは、ぜひ専門家にアドバイスを仰いでみてください。

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    この記事を担当した司法書士
    司法書士法人つばさ総合事務所 代表司法書士 大久保 博史
    保有資格司法書士
    専門分野相続
    経歴平成9年1月に司法書士法人つばさ総合事務所を設立 (平成19年8月に法人化)
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