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【司法書士が解説】相続放棄ができなくなる「処分行為」とは?迷いやすい11の具体例

相続放棄ができなくなる「処分行為」とは?

親族が亡くなり、「借金が多いから相続放棄をしよう」と考えている方は、故人(被相続人)の財産の取り扱いに十分注意する必要があります。

日本の法律(民法第921条)では、相続人が故人の財産を「処分」してしまうと、相続を承認した(単純承認)とみなされ、相続放棄ができなくなってしまいます。

【重要】財産の「処分」と「保存・管理」の違い
処分行為: 財産を減らしたり、自分のものとして使ったりすること(原則、相続放棄できなくなる)
保存・管理行為: 財産を現状のまま維持すること(相続放棄に影響しないことが多い)
故人の財産を売却・解約・勝手に使う
「単純承認(相続する意思がある)」とみなされる
相続放棄ができなくなる!

【ケース別】これって処分行為?11の具体例をわかりやすく解説

では、日常的な手続きの中で、どのような行動が「処分行為」に当たり、相続放棄に影響してしまうのでしょうか。ご相談の多い11のケースを解説します。

1. 葬儀費用を遺産から支払った

結論から言うと、常識的な範囲の葬儀費用であれば、単純承認にはならない可能性が高いです。
過去の裁判例でも、一般的なお葬式の費用を故人の財産から支払うことは道義的にも自然であり、財産の処分には当たらないとされることが多いです。ただし、不相応に豪華な葬儀を行うと問題になることがあります。

2. 故人の借金や未払い金に関する行為

故人の残した支払いを誰のお金で行うかによって、意味合いが大きく変わります。

  • 故人の借金を「遺産」から返済した(処分行為の可能性あり)
    借金やローンを故人の預貯金から支払うと、遺産を勝手に使ったとして処分行為とみなされる危険性が高いです。
  • 故人の借金を「自分の財布」から立て替えた(通常は問題なし)
    ご自身の財産から支払うだけであれば、遺産は減っていないため、基本的には処分行為にあたりません。ただし、「相続人として支払います」と債権者に伝えてしまうとトラブルの元になるため、相続放棄を予定しているなら一切支払わないのが一番安全です。
  • 治療費・入院費を遺産から支払った(状況次第)
    医療右費も故人の債務です。少額であれば問題にならないこともありますが、金額が大きいと債務の弁済(処分行為)と評価されるリスクがあります。
  • 公共料金・固定資産税を遺産から支払った(状況次第)
    財産を維持するための支出(保存・管理行為)と見られることも多いですが、多額の滞納分を一括で清算したりすると問題になることがあります。

3. 故人の車に関する行為

車の取り扱いは、その車に「価値があるかどうか」が大きなポイントです。

  • 車をお金はもらわず廃車にした(場合による)
    中古車として売れる価値がある車を廃車にすると処分行為となります。一方で、動かない事故車やスクラップ同然の車を、管理上の理由でやむを得ず廃車にした場合は、保存行為として認められる余地があります。
  • 外出先にある車を、故人が借りていた駐車場に戻した(通常は問題なし)
    売却したり自分が乗ったりするわけではなく、単に本来あるべき場所に戻す(保管・管理する)だけなので、相続放棄には影響しないのが通常です。

4. アパートの退去や解約に関する行為

賃貸アパートの片付けや退去手続きは、非常に慎重に行う必要があります。

  • アパートの鍵を室内に戻した(通常は問題なし)
    単なる管理行為にすぎません。
  • アパートの鍵を大家さんに返した(通常は問題なし)
    「鍵を返した」という事実だけなら、通常は処分行為にはなりません。ただし、大家さんと「私が相続人として解約の手続きをします」などの合意をしてしまうと、法的評価が変わる可能性があります。
  • アパートを解約(賃借権を放棄)した(処分行為の可能性が高い!)
    故人が借りていた権利(賃借権)も遺産の一部です。これを相続人の判断で解約し、権利を消滅させる行為は、処分行為と評価されるリスクが高いです。大家さんから急かされても、自己判断で解約書類にサインしたり、敷金を受け取ったり遺品を自由に捨てたりしないよう注意してください。
【重要】アパートの解約は慎重に!
大家さんや管理会社には「相続放棄を予定しているため、勝手な解約手続きや遺品の処分はできません」と正直に伝え、対応を保留にするのが無難です。

5. 故人の権利を放棄する行為

「自分は要らないから」と、故人が持っていた権利を勝手に放棄することは、遺産全体を減少させるため処分行為に当たります。

相続放棄の手続き先は「家庭裁判所」です

相続放棄の手続きは、市役所や法務局ではなく、「故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」で行います。
期限は原則として「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」ですので、早めに準備を進める必要があります。

迷ったら自己判断せず専門家へ相談を

ここまで解説した通り、ある行為が「処分行為」になるかどうかは、その財産の価値、誰のお金で支払ったか、どのような事情があったかなどによって結論が大きく変わります。
良かれと思ってやった親族としての行動が原因で、多額の借金を背負うことになっては取り返しがつきません。

「これはやっても大丈夫かな?」と少しでも迷った場合は、ご自身で動く前に、まずは相続問題に詳しい司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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この記事を担当した司法書士
司法書士法人つばさ総合事務所 代表司法書士 大久保 博史
保有資格司法書士
専門分野相続
経歴平成9年1月に司法書士法人つばさ総合事務所を設立 (平成19年8月に法人化)
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